« 2008年12月 | トップページ | 2009年2月 »

2009年1月

ペロー「長ぐつをはいたネコ」

Nagagutu マーシャ・ブラウン絵 光吉夏弥訳 岩波書店

,

【話】むかし、あるところに、ひとりの粉屋がいた。その粉屋が三人の息子に遺したものは、水車小屋と、ロバと、ネコだけだった。末の息子にはネコしか残らなかった。ネコは末息子に長靴一足と袋を用意させた。

それから、ウサギや二羽のシャコ等、何か獲物をとっては王さまに「カラバ公爵から」と言って、二、三か月届け続けた。

ある日のこと、王さまがお姫さまと一緒に川のほとりへ外出することを知ったネコは、先回りして、末息子を川につからせて、「カラバ公爵が、おぼれそうだ!」と叫んだ。

王さまは、いつものネコに気がついて、家来に助けるように命じた。その間に、ネコは王さまに、主人の服は泥棒に盗まれたと説明した。すると、王さまは、すぐに自分の衣装で一番いいのを持ってくるように命じた。その衣装を着ると粉屋の末息子は、きれいな若者に。ネコがお膳立てしたカラバ公爵に。

名ばかりの公爵にならないようにネコはさらに知恵を絞り、人喰い鬼の畑からお城まで手に入れた。その大きなお城に王さまとお姫さまを招いて、その日のうちに、末息子と美しいお姫様は結婚した。長ぐつをはいたネコは大とのさまになり、・・・・。

,

【所感】このお話も、有名ですね。ネコと人喰い鬼のやりとりは、やっぱり面白いですね。最初に、わざと大きな動物に化けさせて、油断をさせたのですから。次にネズミです。ネコとネズミなら勝ち目は分かります。ペローは、従者は「長ぐつをはいたネコ」のように、賢く、かくあるべしと説いたのでしょうか。ブラウンのイラストは、さらっと描いて、躍動感があります。そして、色彩も美しい。「スズの兵隊」もブラウンの絵でした。

|

グリムの「赤ずきん」

絵:バーナディット・ワッツ訳:生野幸吉 岩波書店

グリム版の「赤ずきん」は二人とも狩人に助けられて、寝ていた狼のおなかに石をつめてしまいます。目をさました狼が逃げようとした時に、おなかの石が重すぎて倒れて死んでしまいます。

Akazuki_3 ,

広く一般的に知られている「赤ずきん」のお話はグリム版です。絵はどちらも素敵ですよ。狼のおなかに石を詰める発想って凄いと思いません?ペローの「赤ずきん」の結末の方が自然だと思いましたが。それでは子どもに受けなかったでしょうね。赤ずきんちゃんは、子ども向けの童話なんですから、生きていて良かったと思うのも自然なこと。

|

ペローの「赤ずきん」

Akazukinn_2

絵:エリック・バトゥー 訳:池田香代子 講談社

ペロー版の「赤ずきん」では、赤ずきんもおばあさんも狼に食べられて終わっています。その代りに、教訓が掲載されています。

”・・・・とびきりやさしく声ををかけてくるおおかみが、いちばんあぶないんだってこと、・・・”

訳された池田香代子さんの解説「昔は危険に満ちていた」には、シャルル・ペロー(1628年~1703年)の経歴が紹介されています。

ペローの昔話集のサブタイトルは『コント・ド・マ・メール・ロワ』と付けられていて、意味は「がちょうおばさんのお話」。イギリスの有名な伝承童話『マザー・グース』も「がちょうおばさん」という意味です。

|

ボーモン夫人作「美女と野獣」

Bijyo ビネッテ・シュレーダー:絵 ささきたづこ:訳 岩波書店 20041110日 第1刷発行

,

【話】むかし、あるお金持ちの商人に、息子3人と、娘3人の子どもがいた。商人は、子どもたちに、貴族に負けない位の教育を受けさせた。みんな成長し、なかでも、末娘は美しく、周囲から「ベル」と呼ばれていた。ある日、一家に災難がふりかかり、全財産を失った。唯一残った別荘に引っ越し、父親と息子たちは畑を耕したり、牛を飼ったりして、働いた。末娘のベルも、掃除から食事まで全部一人でこなした。二人の姉は何もせず、一日中ベルをこき使い、いじめていた。

一年が過ぎた頃、商品を積んだ船が一隻だけ、港に入ったという知らせを受け、父親は馬で、港にある町へ出かけた。積み荷は全て、人手にわたり、二人の姉娘からねだられた高価な品々も、買うことはできなかった。帰る途中、大きな森で道に迷い、あたりは暗くなり、雪が降り、寒さと空腹で死にそうになった。すると、突然、明かりのついたお城が見えた。それは野獣の住むお城でした。・・・そこで父親は食事からベッドまで用意されて休むことができた。その間、一度もお城の主を見なかった。帰るとき見かけたバラの花を1本折った。

その瞬間、恐ろしい顔つきの野獣が現れた。野獣は命を助けてあげたのに、バラの花を盗むとは恩知らずだと言って、死んでもらうしかないと叫んだ。父親は許しを請いながら、末娘の「バラの花1本」と言った願いをかなえてあげたかったことを話した。野獣は、三人の娘がいるのなら、身代わりに一人、3カ月以内に連れて来いと。でなければ一人で戻って来ることを誓わせた。

父親は家に帰り、お城で起こった出来事を話して聞かせた。ベルは父親の命が救えるのなら身代りに行くと言って、そして、野獣のお城へ。お城で暮らしてから、あっという間に3か月がたった。ベルは毎晩、野獣に会っているうちに恐ろしくなくなり、醜さも気にならなくなっていた。ある晩のこと、父親の様子を見るために、一週間だけ家に帰らせてほしいと頼んだ。野獣はベルが父親の顔を見たらお城には戻ってこないだろうと思った。その時、自分は悲しくて死んでしまうだろうと告げた。ベルは約束を必ず守ると言って家に帰った。それから、二人の姉の企みとは知らずに、約束の一週間が過ぎてしまった。・・・・

,

【所感】巻末には、訳された、ささきたづこさんの“「美女と野獣」のものがたりについて”の説明が詳細に書かれてあります。

ベルのように慎ましく、親兄弟に限らず他人にも親切で、働き者で、教養のある女性にならなければ、二人のお姉さんみたいになりますよと。また、ベルのように男性を見た目で判断せず、やさしく接すれば幸せになれますよと。こんな教訓を盛り込んだお話なのですが、ベルが次第に野獣を好きになり、愛するようになるプロセスは純愛物語そのものです。

このタイトルの題材で映画やミュージカルで演じられたり、アニメになったりするほど人気があるのは、ベルの愛によって野獣にかけられた魔法が解かれて、ハッピーエンドで終わるからでしょうね。それと「美女と野獣」の組み合わせも奇抜です。それだけに、心の動きにも興味津津。現実にもこの言葉は結構使われていますしね。野獣って辞典には男性の文字はありませんでしたけど、女性でもいいのかなって。「美男と野獣」になってしまいますね。

Bijyo2 ほるぷ出版の「美女と野獣」ローズマリー・ハリス再話、エロール・ル・カイン絵、やがわすみこ訳の絵本には5歳からとあります。簡潔な文とわかりやすい言葉になっています。

|

トルストイ「3びきのくま」

3biki2  バスネツォフ/え  おがさわら とよき/やく 福音館書店 196251日発行 1989年版で既に第56刷となっていますから、多くの方に読まれている絵本です。

,

【話】ひとりの女の子が、森の中にある小さな家を覗くと、誰もいなかったので、中へ入った。この家は3びきのくまの家だった。食堂にはスープの入ったおわんが大、中、小と並べられて、その横には、スプーンも大、中、小と置いてあった。隣の部屋はベット。この家で女の子はスープをみんな飲んで、椅子も壊して、ベットも荒らして、結局小さなベットで眠ってしまった。そこへ、くまの親子3びきが帰ってきた。驚いたくまは、女の子を見つけて噛みつこうとした途端、女の子は気がついて、逃げた。3びきのくまは女の子に追いつけなかった。

,

【所感】もう古いお話なので知っている方も多いと思いますので、あらすじも概ね書きました。簡単なストーリを、トルストイは子どもが楽しめるように書いています。小さな女の子の何とお行儀の悪いこと。それに比べて、くまの家の中は、きちんとした食道と寝室。ユーモアとリズムで解説しているのですから、ついつい読んでしまいます。でも、何だか変ですね。トルストイのねらいは、逆転させてインパクトを持たせたのだろうと思います。人間の家をくまが荒らしたとしても当たり前でしょうし。また、人間同士でもダメでしょうね。不愉快になるだけです。文豪トルストイが子どもたちに願ったことは?

|

アンデルセン「スズの兵隊」

Suzu マーシャ・ブラウン:絵 光吉夏弥:訳 岩波書店 19961115日 第1刷発行

,

【話】男の子が誕生日に貰ったおもちゃは25人のスズ(ブリキ)の兵隊でした。箱の中からテーブルに並べてみると、一人の兵隊だけ1本の足しかなかった。(最後に作られたときスズがたりなかったので。)その1本足のスズの兵隊が同じテーブルの上で見初めた娘は、バレエで片足を高く上げていた為、自分と同じ1本足なんだろうと思った。彼はお嫁さんになってくれたらいいなあと切望した。娘が立っているところは立派なお城の前。自分は箱の中で、おまけに25人と一緒に暮らしている。せめて友だちになれたら・・・。それから、兵隊さんの受難が続く。どんな時でも彼女を忘れたことはなかった。兵隊さんの愛がかなったのは、ストーブに燃やされて溶けてしまった時だった。・・・・・・・・・。

,

【所感】1本足でも健気なに立派な心構えを持っている兵隊さんです。童話のタイトルは「しっかり者の錫の兵隊」となっているのは、そのためでしょう。下層階級に生まれた兵隊さん、よりによって1本足。

「ミッケ」では、スズの兵隊さんの後ろ姿と正面に向いたバレリーナを中央に描いています。物語を知らない子どもでも、そこはミッケの得意なおもちゃの世界です。それで充分楽しめると思います。スズの兵隊さんの結末はドラマチックでした。死しても目に見える形が良かったと思います。

|

グリム童話「ルンペルシュティルツヒェン」

Kinnwotumu_2  金をつむぐこびと「ルンペルシュティルツヒェン」

バーナデット 絵 ★ ささき たづこ 訳 西村書店 1994年9月15日 第1刷発行

,

【話】むかし、ある所に水車小屋があった。水車小屋の主は、貧しい暮らしをしていたが、美しい娘が一人いた。あるとき、王様が水車小屋のそばを通りかかった時、水車小屋の親父は、娘をつい自慢したくなって、娘は、わらを金に紡ぐことができると言ってしまった。

これを聞いた王さまは、次の日、娘を城へ連れて来させた。部屋に、いっぱいのわらとつむぎ車と糸まきがあった。明日の朝までに、わらを金に変えるよう命じた。できなければ死ぬことになると言われた。

部屋に閉じ込められた。娘は泣くより仕方がなかった。そこへ突然、小人が現れて、わらを金に変えたら、何くれる?と。娘は首飾りをあげるわと。

次の日、王さまは部屋いっぱいの金を見ると、今度は前よりもっと大きい部屋にわらを入れて閉じ込めた。2度目も、同じように、小人が現れて、何くれる?と。娘は指輪と。

王さまは、さらに大きな部屋にわらいっぱい入れて、娘に、今度できたら、妃にむかえると言った。3度目も、同じように、小人が現れて、何くれる?と。娘は、もう何にもないと言うと小人は、王さまとの間に生まれた最初の子どもをくれたら、もう一度、わらを金に変えてあげると。娘はそう約束するより方法がなかった。

娘が王さまの妃になり、子どもができると、小人が妃のところにやってきた。約束どおり、子どもをよこすように言った。妃のどんな条件も受けつけずに、子どもを要求した。けれど、小人は3日の間に、自分の名前を言い当てたら子どもは連れて行かないと。・・・・・・。,

Daikuto この話の内容とよく似たお話が日本の昔話にあります。

「だいくとおのろく」

松居 直:再話 赤羽末吉:画 福音館書店 1962年6月1日発行 

,

【話】むかし、あるところに、とても流れの速い大きな川があった。何度、橋をかけても流されてしまう。村人たちは困り、そこで一番名高い大工に頼んだ。引き受けた大工は、心配になって橋を架ける場所へ行って、じっと流れる水をみつめていた。すると、鬼が水しぶきの中から姿を現して、”「・・・・おまえのめだま よこしたら、おれが おまえにかわって、その はし かけてやってもええぞ」”と言った。大工は、”「おれは、どうでもよい」”といい加減な返事をした。次の日、また次の日には、立派な橋が川に架かっていた。鬼は出てきて約束の両目をよこせと大声で言った。

鬼は自分の名前を当てたら、許そうと言った。・・・・・・

娘は小人に助けてもらわなければ、殺されるところでした。小人は悪魔が教えたと言って悔しがって消えてしまいましたが、小人は何故、生きた子どもが欲しかったのでしょう。鬼六の場合は、大工の目玉を鬼の子どもにあげるためでした。・・・・・・。

グリム童話の場合、訳された方により、話の結末が違っています。

「ベストセレクション・初版グリム童話集」

吉原高志・吉原素子:編訳(白水社)には“・・・小人が怒り狂って走って行ってしまいました。そして二度とやってきませんでした。”と結んでありました。

「決定版・完訳グリム童話集」3

野村 泫:訳(筑摩書房)には“・・・すると小人はかんしゃくを起こして、両手で左足をつかむと、われとわが身をまっぷたつにひきさいてしまいました。”となっていました。

どちらにしても小人が憐れ。鬼六にはユーモアがあり、謎かけ遊びみたいな親しみがありましたが。

|

チャレンジ「ミッケ」⑤むかしむかし

Mikke_2  作:ウォルター・ウィック 訳:糸井重里 2008113日 初版第1刷発行

おとなも こどもも いっしょにあそべる かくれんぼ絵本 

Can You See What I See? 

1991年『ミッケ』を出版。それから、シリーズは大評判になり、①おもちゃばこ②ゆめのまち③コレクション④サンタクロースと続いて⑤むかしむかしが出版されました。

むかしむかしは

1、3びきのこぶた、2、あかずきんちゃん、3、ヘンゼルとグレーテル、4、びじょとやじゅう、5、3びきのくま、6、ねむりひめ、7、にんぎょひめ、8、すずのへいたいさん、9、ながぐつをはいたねこ、10、ルンペルシュティルツキン、11、シンデレラ、の11話です。

次回は、この11話の中からアンデルセンの「すずのへいたい」とグリムの「ルンペルシュティルツキン」のお話です。

|

「クラウデイアのいのり」

Kuraudeli_2  村尾靖子・文 小林 豊・絵 ポプラ社 2008年7月 第1刷

この絵本を見て驚きました。また、海拓社より「クラウデイアの奇蹟の愛」ノンフイクションとして出版されていたことも。この話はメディアを通して知っていましたから。

”戦争後のロシアで思いもよらない出会いをした日本人男性とロシア人女性。40年もの歳月をともに支えあい、ひたむきに生きた二人の愛はかけがえのないものに・・・・・。”

日本で待っていた家族のもとへ51年ぶりに帰ったのですから、本来なら心から喜んであげたい話なのですが。何故か悲しい。とても複雑な気持です。

絵も「せかいいちうつくしいぼくの村」など、多くの絵本を描いてきた小林豊氏です。この絵本に携わってきた方々の思いは、日本人として、クラウデイアさんに感謝の気持を表したかったのだろうと思いました。

2008年:日本絵本賞読者賞(山田養蜂場賞)

|

「あたらしい ともだち」

Atarasii トミー・ウンゲラー [] 若松宣子[] あすなろ書房 20081020日 初版発行

この新しい絵本はトミー・ウンゲラー自身が75歳を超えて2007年に発表した作品だそうです。

,

【話】新しい町に引っ越してきたラフィは9歳の少年。よそもののラフィに友だちがいない。そこで大工仕事の得意なラフィは工作で「あたらしいともだち」犬や猫を作った。隣に住む縫物の得意な女の子キー・シンの協力で、その数はいっぱいになり、表の家の前に置いた。子どもたちが集まってきて、仲間に入れてと言ってきた。それから町は大騒ぎ・・・・。

,

【所感】主人公の二人を敢えて有色人種にしたことは、ウンゲラーの人種差別反対への思いがあったからでしょう。そして二人のどちらもウンゲラー自身なのだそうです。

絵をページごとに追って見ていくと工作過程がわかります。材料がなくなるとゴミ捨て場に行って探したというのですから、噂にもなるでしょう。そんなことも苦にせず物づくりに熱中できたこと、あったことが、生きながらえたのだと。

|

スズキコージ「ウシバス」 

Usibasu あかね書房 1995415日初版第1

,

【話】牛のバスの停留所に集まってくる人らしき人々。やがて牛がウシバスの旗をなびかせて走ってくる。牛の背中には梯子。みんなが何とか乗ると、牛は急に走り出し、ウシバスの4文字を並び替えた言葉を発しながら暴走。・・・・。

,

【所感】「サルビルサ」は戦争の虚しさ、愚かさを皮肉たっぷり描いた絵本でした。「ウシバス」はそのまま牛のバスに違いないのですが。この牛はもとからバスの役割なんぞ知らなかったとしか思えない。

牛の絵の停留所に集まった人々は変だと思っても乗ったのが間違いのもと。牛はバスになりたかっただけかも。

背中にみんなが乗った時の牛の顔。もう嬉しくて仕方がない。はしゃいで水の中まで入ってしまいます。

水から出た時はもう誰も乗っていません。散々な目に遭った人々は逃げて行きます。牛は“ウシバス?”と言ってきょとんとしています。

言葉は簡単なカタカナ4文字と2文字のみ。絵を見ていると可笑しさがこみあげてきます。

|

「うんがにおちたうし」

Unnga フィリス・クラシロフスキー 作 ピーター・スパイアー 絵 みなみもと ちか 訳 ポプラ社 1967年2月 第1刷

,

【話】オランダの畑の中で暮らしていた牛のヘンドリカ。お百姓さんのホフストラおじさんに毎日ミルクを絞られていた。そのミルクを馬のピーターが荷車をひいて町へ運んでいた。ピーターから聞く町の話は知らない世界。羨ましいと思っていたヘンドリカにチャンスがやってきた。それは、運河に落ちたことから・・・・。

,

【所感】タイトルを見た子どもは、それから、どうなったのだろうと思うでしょうね。この絵本も結構読まれているんですね。1989年版で20刷となっていますから。たまたま運河に落ちて、たまたま箱に乗って、といくつもの偶然はヘンドリカにとっていいことばかり。絵も綺麗です。彩色していない何枚かの絵を見ると、ちょっと残念に思いましたが。

細密画で描く風景の移り変わり、町の様子も楽しめます。ピーターから聞いた話を実体験できたヘンドリカ。嬉しい気持ちが素直に、子どもたちにも伝わって、心地好かったのでしょうね。大人の私も、こんな風に運が良けりゃってね。

|

「わらのうし」

Wara ウクライナの昔話 内田莉紗子 文 ワレンチン・ゴルディチューク 絵 福音館書店 1998年9月15日発行

貧しい老夫婦が、藁で作った牛で幸せを掴んだお話。

簡単なストリーで幼年向きですが、大人は絵で満足する作品でしょうか。

,

【所感】藁で作った牛にタールを塗っただけで熊や狼、狐が捕まるなんて誰も思っていないでしょう。それでも人気があるのは、貧しい暮らしの老夫婦、しかも女性であるおばあさんの大活躍と、藁という素材でしょうか。

”藁にも縋る”:溺れる者は藁をも掴む。そんな諺にもある位、貧しい人々の立場は藁みたいだと。そんな立場でいながらユーモアを忘れなかった人々、子どもたちはこの「わらのうし」を応援してきたのでしょう。そんな気がします。

|

「しあわせハンス」

Siawase グリム童話/フェリクス・ホフマン え/せた ていじ やく 福音館書店 19761020日発行

,

【話】ハンスは7年働いた給金に金のかたまりをもらって、郷里をめざした。その金のかたまりが、馬→牛→豚→鵞鳥→砥石と交換していく。最後の砥石も水を飲むとき泉に落としてしまう。重荷になっていた石がなくなって心もうきうき。やがて母さんの家に着いた。

,

【所感】絵だけでもわかる絵本です。金のかたまりが全てなくなって幸せといえるのは、ただ一つ、命でしょうね。元気に無事に故郷に辿り着いたんですからね。お母さんを見て万歳をしている絵が何よりです。

道中、ハンスが望んだこととはいえ、騙していった人たちの後ろ姿は、仕方がないと思わせています。

けれど、最後のとぎやだけが鵞鳥を抱えて、ハンスを見る横顔を描いています。それは策士の顔?

|

「三びきのやぎのがらがらどん」

Sannbiki マーシャ・ブラウン え せた ていじ やく 福音館書店 1965年7月1日発行

1996年発行の絵本によると既に90刷も出版されていますから、人気のほどが窺えます。読んであげるなら4才からとありますから、幼年向きの絵本と言えます。内容もいたって簡単です。,

【話】三びきのやぎの名前がどれも「がらがらどん」と言った。ある時、山の草場で太ろうと山へ登って行った。登る途中の谷川に橋があって、そこを渡らなければならなかった。

ところが、橋の下にには、気味の悪いトロルが住んでいた。その橋を一番小さながやぎから順番に三びきが渡ることに・・・。,

【所感】訳された瀬田氏のヤギの名前”がらがらどん”は親しみがあり、日常的にうがいをする時の音がガラガラと使用されていますね。それからドンは太鼓の音ですから。また、3びきのやぎのチームワークの良さが際立っています。

小さなやぎは、その計画を知っていればこそ、どうどうと返答もでき渡っていますからね。

|

小泉八雲:原作「雪女」

Yukionnna 小泉八雲=作 伊勢英子=絵 平井呈一=訳 偕成社 発行/20002月1刷

,

【話】武蔵の国のある村に、年老いた茂作と18歳の若者の巳之吉という、ふたりの木こりが住んでいた。ある寒い夕暮れのこと、ふたりは山から帰る途中で、ひどい吹雪に会った。ふたりは、とりあえず、渡し守の小屋の中へ逃げ込んだ。火の気のない小屋で茂作は横になってすぐに眠った。巳之吉は凄まじい大吹雪に蓑の下で震えていたが、やがて眠った。

巳之吉の顔に雪があたって、驚いて目を覚ますと、閉めたはずの小屋の戸が開いていた。寝ている茂作の上にかがみこんで、白い息を吹きかけている白装束の女がいた。女は、急に振り向き、今度は巳之吉の上にかがみこんで、じっと見入った。女の目は怖ろしい目をしていたが、その顔は美しかった。悪さはしないから、今夜見たことを言ったら殺す、と言って出て行った。明け方になって、吹雪はやみ、小屋に船頭が戻って来た。船頭に介抱された巳之吉は正気にかえった。

その後、茂作爺さんの死んだことに、脅えて、長い間病気になっていた。しかし、あの白い女の幽霊については、誰にもひと言も言わなかった。病気が治ると、木こりの仕事に戻った。毎朝、ひとりで森へ行き、夕方、薪を背負って帰って来た。その薪は、おふくろが手伝って売った。

その翌年の冬のこと、家に帰る途中、両親に死に別れ、これから江戸へ行くという器量のいい娘に出合った。名前はお雪と言った。・・・・・・・。

,

【所感】小泉八雲の「耳なし芳一」同様「雪女」も有名な作品ですから、知っている方も多いと思います。伊勢英子さんが絵本化した「雪女」を改めて、絵を見ながら読んでみました。絵のせいでしょうか。雪女がこれほど、切なく、可哀そうに思えたのは。不思議ですね。

もともと、雪女がいなくても吹雪で遭難して、山小屋で寝てしまったら、凍え死んでしまうことは定説になっていますからね。雪女が戸をあけて、目を覚ましたのなら、その時点で助けてもらったようなものです。雪女に。

雪女が、何故、巳之吉の前に現れたのか。誰にも言うなと言っていましたから。そのことも考えられますけど、巳之助の子を十人も産んでいますね。好きになった男を追ってきたとしたらどうでしょう。健気なに尽くしていましたし。女の情念が哀れに映し出されて。それに比べて男の凡庸なこと。

この物語は「KWAIDAN」に収められていて分類上は英米文学なのだそうです。作者が日本に帰化して、題材が日本の伝説・奇談であることから、日本の名作として扱ったと記されてありました。

|

「ナイチンゲール」

Naiti 原作:HC・アンデルセン 文:角野栄子 絵:太田大八 小学館 2004920日初版第1刷発行

,

【話】昔、中国の皇帝の都には世界中からたくさんの旅人がやってくる。みんな豪華な宮殿を見て感心するけれど、ナイチンゲールと呼ばれていた鳥の歌声が一番素晴らしいといった。皇帝は自分の都にいるというこの鳥の声を一度も聞いたことがなかった。皇帝はさっそく大臣に探すように命令した。

ナイチンゲールは小さな灰色をした鳥でしたが、歌声を聴いた皇帝は涙まで流した。それから、宮殿で大事にされて暮らした。

ある日のこと、日本の帝から贈り物が届いた。それは、ダイヤやルビーやサファイアをちりばめた作り物の鳥でした。ねじを巻くとナイチンゲールと同じように上手に歌ったので、合唱させようと試みた。ところが、上手く合わなかった。ナイチンゲールは緑の森に帰えってしまった。

それから1年が経ち、作り物の鳥は壊れた。修理をして直したが、機械がひどく傷んでいた為、一年に一度しか歌わせることができなかった。

それから5年後、皇帝は重い病気にかかった。宮殿の人たちは、もう皇帝は亡くなったと思って去った。誰もいなくなった部屋に死に神が現れ、周りのカーテンから不思議な顔がいくつも覗き囁いた。皇帝は震えた。その囁きを遮るには音楽だと叫んだ。しかし、ねじを巻く人までいなくなっていたので、作り物の歌声すら聴くことはできなかった。皇帝が苦しんでいる時、高い窓の向こうから、美しい歌声が聞こえてきた。

美しい歌声が響き渡ると、囁いていた不思議な顔たちは消え、死に神までが窓から出て行った。皇帝は安らかな眠りに落ち、やがて、朝の光が窓からさしてきたころ、目を覚ました。あの小さなナイチンゲールは、尚も歌い続けていた。

皇帝は感激した。これからずっとそばにいて欲しいと、そして、あの作り物の鳥を壊してしまおうとも言った。ナイチンゲールはあの鳥も一生懸命歌っていたのだからと反対し、これからは自分が飛んできて来て、世の中で起きていることや、悪いことを陛下に話をして、陛下をはじめみなさんが幸せになるように心を込めて歌うといった。

その代り1つだけ約束して欲しいと。その約束とは・・・・・。

,

【所感】皇帝を助けたのは小さな灰色の鳥、ナイチンゲールでした。美しい歌声に癒されて元気になります。この話はアンデルセンの年賦を見ると、「みにくいあひるの子」と共に1843年(38歳)で刊行された『新童話集』に収められたものです。

この物語のキーワードは[ほんものは気のむくままうたうので]という言葉でしょうか。音楽長が正確に歌う作り物の鳥の肩を持つシーンがあります。自然の中で自由に歌っているナイチンゲールはこの話を聞いたのでしょうね。宝石で作られた偽物の鳥のほうが勝れていると言われたようなものですから。只、その作り物が日本からの贈り物。黄金の国ジパングとして紹介されていたマルコ・ポーロの「東方見聞録」の影響でしょうか????。

絵は太田大八さんです。長い話ですけど、絵だけでも充分楽しめます。

|

« 2008年12月 | トップページ | 2009年2月 »