「月夜のでんしんばしら」
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【話】ある晩、恭一は鉄道線路の縁を歩いていた時、その晩は、線路の見まわりをする工夫にも、危険な汽車にも出会わなかった。月明かりの中を歩いて行くと、停車場のあかりが綺麗に見える所まで来た。そこはまるで大きなお城があるように思った。
突然、がたんとシグナルが下がった。すると、線路の左側でぐわあん、ぐわあんと唸っていた電信柱の列が大威張りでいっぺんに北の方へ歩き出した。
二本の柱がよろよろ倒れそうになると、後ろから来た元気のいい柱がどっちかが参っても一万五千人みんな責任があるんだぞと脅した。電信柱はまるで川の水のようにやって来た。その行軍を見ていた恭一に、指揮をとっていた総長のじいさんが声をかけた。
行軍を見たのなら仕方がないと言って恭一に握手を求めた。軽く握られただけでもビリリッときた。じいさんが、手帳を取り出して自慢話をしていた時、汽車が遠くに来るのを見た。
じいさんは慌てて進軍をやめさせた。電信柱の行軍はぴたりと止まって普段通りに戻った。汽車がごうとやって来た。機関車の石炭は真っ赤に燃えているのに、客車の窓はみんな真っ暗だった。するとじいさんは・・・・・・。
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【所感】鉄道線路から見える多くの電信柱から軍隊の行軍を連想した事にまず驚かれると思います。そして、その行軍の軍歌はリズミカルに「ドッテテドッテテ、ドッテテド、でんしんばしらの ぐんたいは はやさ せかいに たぐいなし。ドッテテドッテテ、・・・・。」と歌うのです。
はじめて電灯がついた頃のこと、電気に息をかければ消えると言った話は、子どもにも分かりやすいです。また、電信柱が疲れて、ひとりでも遅くなれば、針金が弛むという表現も想像できます。
電信柱の軍歌に籠められた言葉は、軍隊の厳しさを伝えています。ドッテテも繰り返せばリズムになりますけど、ドテって重い言葉ですよね。恭一の見た光景は、幻想かも知れませんが、伝えたかったことはリアルです。
絵は「双子の星」を描かれた遠山氏です。
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